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福岡高等裁判所 昭和39年(く)2号 決定 1964年2月07日

少年 T(昭二一・八・二二生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告申立の趣旨は、末尾添付の抗告申立書記載のとおりである。

(一)  まず抗告申立の趣旨の第一、について按ずるに、原決定摘示の事実、殊に少年がA外一名と共謀の上愛○淑○(当二二年)と富○男(当一七年)を恐喝した事実は本件記録に徴し之を認めるに十分であり、特に少年はその保護者実父○義○実母○フジ○、附添人弁護土野村高章出席の審判廷において原判決摘示の事実をすべて認めている点に照らしても少年の右非行事実につき疑を容れる余地はない。所論中に被害者富○男の司法警察員に対する供述調書謄本は伝聞証拠であり、これを争う機会が少年に全く与えられていないので、これをもつて犯罪事実認定の資料とすることはできない旨主張する部分があるけれども、保護事件の少年はもとより刑事被告人ではないので、刑事訴訟法上の伝聞法則に支配されるものではなく、又少年については審判期日が定められ審判廷が開かれたのであるから、之を争う機会が全くなかつたものとはいえないのであり、又所論中に少年の本件非行は誤想防衛にいでたか、若しくは期待可能性を欠く旨主張する部分があるけれども、少年の本件非行が少年がAの命に服従しなければ同人から生命、身体に危害を受けるやも知れないと考え、已むなくなした行為であることを認むるに足る資料は存しないので所論はいずれもその前提を欠き採用することはできない。論旨はすべて理由がない。

(二)  次に同趣旨の第二について調査するに、少年の両親は安定した生活をしており、少年に対し在宅することを前提とする処遇を強く希望していることは所論のとおりであるけれども、少年は本件非行前暴行罪により一回恐喝罪により一回福岡家庭裁判所小倉支部において保護的措置がとられているにもかかわらず更に本件非行に及んでおり、本件非行の動機態様や少年は不良顕示性を帯びた上意思の弱い性格であること等を考えると、今回はむしろ規律ある少年院に収容し、適切周到な訓陶を施すことが必要であると思料されるので、原判決が少年に対し中等少年院送致の保護処分をしたことはまことに相当であつて、原決定の処分に著しい不当があるものとは認められない。

そこで本件抗告はその理由がないものと認め、少年法第三三条第一項に則り主文とおり判決する。

(裁判長裁判官 大曲壮次郎 裁判官 古賀俊郎 裁判官 中倉貞重)

抗告申立書<省略>

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